第15章 かぐや姫と姫さんのお茶会
この場で一体誰が悪かったかと訊かれれば、間違いなく私だと断言できる。
あれは本当に私が悪かった。
急ぎの用だからと、先触れも出さずに天主を訪れたのがいけなかった。
「信長様少々よろし…」
「「………」」
いつかこの日が来るのではないかと思ってはいた。
信長様が致している現場に出くわす日が来るのではないかと。
しかしそれは、私が夜に天主に訪れなければ済む話である。
異性として別に惚れていない男の夜の相手が男か女かも分からないような現場には、正直出くわしたくもなかった。
しかし、そこには一つの見落としがあった。
それは、あの信長様が必ずしも夜だけに限定するとは限らないということ。
そしてこれは、私の一生の不覚であった。
この日の衝撃を生涯忘れることはないだろう。
まさか、まさか信長様が夜以外で致す相手が彼の右腕であった。
秀吉どのが信長様を押し倒している状況に、私は出くわしてしまった。
見なかったことにすれば良かったものを、私は反射的に思ったことをそのまま呟いてしまった。
「………下克上」
そのまま、そのままそっと襖を閉じて何事もなかったように天主を離れた。
襖の奥から誰かの叫び声が聞こえた気がしたが、おそらく気のせいだろう。
きっと叫び声ではなく喘ぎ声だ。あまり、否かなり聞きたくないから一刻も早く離れねば。
何もおかしくはない。
むしろおかしいのは無礼を働いた私だ。
両親が知ったらきっと怒られて森に放り出される。
また猪で暖をとって寝なければならない。
この時代では男同士がまぐわうのは珍しくない。
どうやって致すのかはよくわからないが、私の管轄になった時に知れば良いことである。
それによく考えてみれば、夜は音がよく響く。
気温が下がることで音の波が回折して、昼よりも広い範囲に音が届いてしまう。
ならば昼に致すというのは非常に合理的である。
信長様のことだ、政務の休憩がてらに発散することなど造作もないだろう。
ましてやこの時代は下克上の時代。
未来の天下人である秀吉どのが上であっても不思議ではない。
そう、きっとそうなんだ。
「華音?」
「戻るの早かったな。信長様いなかったのか?」
「いたにはいたのですが、あられもない姿で秀吉どのに組み敷かれておられました」
「「なんて??」」