第14章 姫さん、特訓する
次の日。
馬術訓練をする時間よりも早くに呼ばれた華音は道場へと赴いた。
そして、とんでもないことを言われた。
「そこな二人に勝ったら馬術を教える」
「は??」
光秀が指す先には、忍者の装束を纏った女性らしき人が二人いた。
状況的に織田軍側のくのいちだろう。
「二人というのは、一人ずつですか?」
「いや、二人同時に。つまり二対一だ」
「…あまり、女の人殴りたくないのですが」
「そこはお前の技量にかかっている。今回は体術のみではないから、武器はここにある何を使っても構わない」
「………」
ここにある武器というのは、弓矢と火縄銃、そして木刀と竹刀。
華音は考える間もなく木刀を選び、右手で持った。
「おや、それだけでいいのか?相手二人は苦無や手裏剣も使うぞ」
「多ければ良いものでもないので」
「そうか。勝利条件を言っていなかったな。どちらか起き上がれなくなるか降参するまでだ」
「(雑だな……)
今の私が、忍者二人に勝てると?」
「“昨日”の己を守っても何も変えられない。不変と劣化は同意義だ。なんでもいい、“今日”のお前が“昨日”のお前を超えろ」
光秀の言葉には説得力がある。
どんな猛将でも、毎日の鍛錬は欠かさない。
それは当然、“昨日”の自分より強くなるためだ。
「よろしくお願いします」
木刀を一度帯に収め、相手二人に頭を下げて礼をした。
相手も黙って礼を返す。
「二人共、殺す気でやれ」
「「御意」」
光秀の命令を合図に、それまで何も感じなかった二人から殺意がぶわりと届いた。
華音はそれを肌で感じ、右手で木刀を持って構える。
「では……
___はじめ」