第14章 姫さん、特訓する
(侮れんな)
以前から理性の強い娘だとは思っていたが、まさかここまでとは思っていなかった。
「その恐怖を忘れないことだ。撃ち抜く喜びに身を任せれば、銃に殺される」
「…貴方は、こんな気持ちでいつも戦っておられたのですか」
「……お前は、思いがけないことばかり言う」
光秀の返答を肯定と見做した華音は、その端正な顔を僅かに歪めた。
「さあ、もう一度だ」
「…はい」
華音は覚悟を決め、再び銃を構えた。
これは、人を殺すための武器ではなく、人の命を守るための盾と化すと証明するために。
「…光秀どの」
「何だ」
「次は、馬の乗り方を教えてください」
「…良いな。颯爽と馬に乗って現れたお前を見て呆けた秀吉の口に饅頭でも突っ込むか」
「お土産は大事ですね」
再び引き金を引いた華音の弾は、今度こそ的に命中した。
___
「___さて、近頃はどうだ?光秀」
「どう、とは?」
「とぼけるな。貴様が自ら名乗り出てまで面倒を見ている華音のことだ」
信長への政務報告が終わった光秀は、退室の前に信長の質問に捕まった。
華音の近況を訊かれ、しばらく考え込んだ光秀は口を開いた。
「良くも悪くも未知数です」
「ほう」
「最初に簡単な問題を解かせました。いくつか外していましたが……いつかの謹慎中に三成が貸した本にあった問題は全て正解していました」
要領が良いとか、飲み込みが早いと言えばそれまでである。
しかし、その言葉だけでは片付かない気がしたのだ。
「武術も射撃術も、やればやるほど精度が増していました。
明日、馬術の前に少し試したいことがあるのでよろしければご覧になられたら良いかと」
「試したいこととは?」
「なに、軽い手合わせです」
昨日の今日で、光秀は確信した。
「おそらくあの娘は……___」