第12章 月の国の一族
信長、秀吉、陽臣、空臣、華音が同座の上で膝を合わせる中、華音は自分のことを明かした。
500年後の日ノ本から来たこと。
正真正銘、継国の末裔であること。
後者については疑いようはなかった。
というのも、顔を合わせた瞬間から彼らはお互いを血縁だと直感したから。
「すぐに分かりましたよ。陽臣様の顔は私の母にそっくりでしたから。それと同時に、私も本当に継国の者だということも」
「…俺も直接訊いてはいなかったけど、会えば充分だったよ」
華音は自分の母が陽臣に似ていると言ったが、空臣は少し違う。
自分の父が穏やかに笑う顔と華音の顔が酷似していたのだ。
佐助と政宗と常長以外に華音の笑みを見た者はまだいないが、時間の問題だろう。
「ついでに言えば、なんの躊躇いもなく川に突き落とす思い切りの良さも父上にそっくりだ」
「もしあのまま一緒に拐われていたら貴方の尻が割れるどころか尻の穴が無事じゃなかったよ」
「さっき秀吉さんに尻とか言うなって言われてなかったっけ」
「掘られてた」
「やめてあげて」
華音の言っていることは間違ってはいない。
確かに空臣の容姿なら、華音と共に飢えた男達の餌食となっていただろう。
しかし如何せん華音は行動にも言葉にも躊躇いがない。
躊躇が無さすぎて下ネタがシモに聞こえない事態だ。
「まあ、自分の息子が掘られるのは俺も本意じゃない。助かった」
「どういたしまして」
絶世の美貌の持ち主達が下ネタを言い合うという危ない状況に終止符を打とうと、秀吉は先程から気になっていたことを訊いた。
「信長様、継国というのは一体…?」
「俺も直接関わりがなかったからな、幼少の頃にちらりと名を耳にしたことがある程度だ。だが家康や光秀からは大雑把だが聞いてはいた。かぐや姫の子孫だとか」
「はぁ!?」
「大雑把過ぎるな…つっても一から教えるのも意味ねーし…おい俺の子孫、説明」
「人間になったかぐや姫の孫の子孫です」
「そうそれ」
秀吉の脳はもうキャパオーバー寸前である。