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【イケメン戦国】白衣の戦姫

第9章 姫さん、拐われる


そろそろ頃合いかと思い、政宗が一歩踏み出した時。



「……信長様が必要としたのが」



華音の何気ない、いつも通りの穏やかな声に足を止める。



「ただ名のある武将ではなかったというだけの話では?」

『………!!』



その言葉は、この場にいた者達全員の心の臓の核に響いた。




相手は年端もいかない(頑なに年齢は教えてくれない)小娘だ。
生意気で、恐れを知らなくて、計算高くて小賢しい小娘。

どうして信長に認められているのか分からなかった。
情けと好奇心で生かされていて、飽きたら捨てるのだろうと思っていた。
今まで信長が女に求めたのは、男性として当たり前に存在する性欲の捌け口のみ。
来る者拒まず去る者追わずで、飽きるまでもなかった。
(光秀と家康と三成は知らないが)自分達とてそういう節があるし、そのことを疑問に思ったことはなかった。

そんな“女”が。
どうしてそんなことが言えるのか。
動揺するでも激昂するでもなく、当然のようにその言葉を口に出せるのか。

どうして、自分達の方が動揺しているのか。
ただの小娘の言葉に、どうして気分が高揚しているのか。彼女が本心から言っていると確信しているのか。


どうして、嬉しいと思っている自分がいるのか。



「…あの子が」



沈黙を破ったのは家康だった。



「あの子が信長様に気に入られた理由が分かった気がします」



家康の言葉で、今までぐるぐる回っていた思考が呼び戻された。
気づけば、先程まで向こうにあった気配が近づいているのを感じた。



「あれ、皆さんお揃いで」



華音は何事もなかったように歩み寄る。
いや、実際彼女にとっては本当に何でもないのだ。
ただ本心を口にしただけ。



「…ぶはっははは!!」



段々と自分達が考えていたことが馬鹿馬鹿しくなり、政宗が声をあげて笑った。
それにつられて秀吉も三成も家康も笑い出す。
当の華音は四人が笑う理由が分からず首を傾ける。



「あー笑った。笑ったら腹へってきたから皆で飯食いに行くか、秀吉の奢りで」

「いいですね」

「ありがとうございます秀吉様」

「じゃあ遠慮なく、秀吉どの」

「少しは遠慮しろお前ら」



秀吉が皆に食事を奢った日が、記念すべき皆が華音を認めた日となった。
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