第6章 姫さん、謹慎中
「…増えているな」
「猫さん、ここにいたのですね」
「どうも光秀どの、三成くん」
華音の様子を見に行こうとして部屋を訪ねた光秀と三成。
二人の目の前には、華音の頭の上に器用に乗っかっている照月と、胡座の上にいる猫と狐、傍らにウサギが二羽ほどいた。
そして華音以外全員寝ている。
先程光秀が監視から受けた報告では照月と猫だけだったのだが、いつの間にか動物が増えていたのだ。
しかも自分の飼い狐もいる。
「お茶淹れましょうか」
華音が読んでいた本をぱたんと閉じると、それに合わせて動物達が起き上がり各々の場所へ散って行った。
狐は光秀のところに、猫は三成のところにおさまる。
光秀が「軍隊か」と思っている間に華音はてきぱきと座布団を2枚敷いて3人分のお茶を淹れた。
「何かご用でしたか」
さりげなく1番先に華音がお茶を飲み、怪しいものは入っていないことを証明する。
そんなことをしなくても光秀達ならば多少の毒は効かないだろうが、これは華音なりの誠意である。
「何だ、用が無かったら来てはいけなかったか」
「謹慎の意味がなくなるのでは?」
「お前を部屋から出すなと言われているだけで、部屋を訪ねるなとは言われていない」
「なら、大丈夫です」
華音と光秀の会話が終わったところで、三成が口を開いた。
「華音様、私がお渡しした本は如何でしたか?」
「諸葛孔明のやつが面白かった」
そう言って華音は諸葛孔明が登場する本を出す。
三成が持ってきた本に苦戦するかと思いきや、ちゃんと読んでいたことに光秀は少なからず驚いた。
対して三成は嬉しそうに微笑んだ。
それから三成は持ってきた本について華音と話を掘り下げる。
華音も三成の質問にちゃんと答えて、自分が面白いと思ったところと理由を言葉にする。
その言動から、華音の頭は並の町娘のそれではないことが易々と分かる。
元より、先の戦にて数十人の怪我人の手当てをした時点で只者ではないと分かってはいたが。