第6章 姫さん、謹慎中
「…春、は、あけぼの……やうやう、白く…なり……」
分かってはいたが、この時代の字は楷書でないため非常に読みにくい。
知っている文章から読んで字を覚えようと思ったが、どうやら正解だったようだ。
これはこれでなかなか勉強になる。
…万が一現代に帰った時、役に立つかはまた別の話だが。
「ニャウ」
「照月、今取り込み中だから、膝だけね」
「ニャ!」
「ミャー」
「……名の知らぬ猫さんも」
「ミャ!」
「キュウ」
「待ってなんで狐がいるのここに」
照月と猫を膝に乗せると狐も擦り寄ってきた。
照月が政宗どののペットだったから、この猫と狐も誰かのペットだろうか。
「狐……光秀どのか」
「キュウ!」
「なるほど」
光秀どのの名を言うと、それに反応するように狐は元気よく鳴いた。
テキトーに狐っぽい人を思い浮かべたが合っていたようだ。←失礼
「…照月、猫さん、一度退いて」
2匹を一旦膝から降ろし、正座を崩して胡座をかいてその上に3匹を乗せた。
小袖や振袖だったら大惨事だったが、袴を着ていて良かった。
普通の人間は、普段を3割ほどの意識で生活している。
信長様達のような、常に体勢を維持していなければならない人は7割前後。
でも私はそのどちらでもない。
否、どちらも出来ないのだ。
私は、意識を0か10でしか持てない。
最初の頃こそ10の状態が続けばすぐにバテていたが、何年も経てば体力が底上げされてかなりの期間保つようになった。
それらをやっていて分かったのは、0の時、つまり私がぼーっとしている時は動物がめちゃくちゃ寄って来ることだ。
あとは寝てる時もたまに寄ってくる。
そしてだいたい寝る。
現に今も胡座の上にいる3匹は既に爆睡している。
よくこんな大して柔らかくもない場所で寝られるなとつくづく思う。
「___灰、がち、に…なりて、わろし」
おおよその平仮名がつかめたところで本を閉じ、三成くんから借りた難しめのやつを読み始める。
……持ってこられた本の6割が兵法書だったことと、いつの間にか膝から肩に移動して寝ている照月の寝相には突っ込まないことにした。