第27章 魔王の提案
「___おい秀吉、箸が止まってるぞ」
「…ああ、すまん」
食事の手が止まっていた秀吉に、すかさず政宗が指摘する。
今回の食事の席は、わざわざ信長が秀吉、三成、政宗、家康を指名した。
この面子を指名したということは、信長から大事な話があるということだ。
食事を終えた武将たちは、何を話されるのかと珍しく思考を回していた。
「___貴様らは今、華音についてどう思っているか、秀吉から言ってみろ」
「……はっ?」
「なんでもいい。人としてでも医者としてでも継国としてでも、女としてでも」
しかし主君から言われたのは、今ここにはいない少女についてのこと。
一瞬固まりつつも、先ほどまで考えていたことを改めて言葉にした。
「…この三月、華音自身が築き上げた信頼は確固たるものです。俺はそれに応えたいし、華音にも応えてほしいと思っています」
信長はにやりと笑い、続いて三成の名を呼んだ。
「華音様の持つ御慧眼は独特で、いつの間にか私の作戦立案には欠かせないものになっております。あの方は織田軍にとって必要不可欠な方だと私は思います」
「まず退屈しない。あいつのおかげで料理の幅もぐっと上がるし、賭け事なんかも考える罰がえげつなさ過ぎて毎回楽しみにしてる」
「あれは全っ然笑えない。……でも、あの子の医学薬学の知識は本物だ。医療班の指導も余念がない。あの子は間違いなく日ノ本一の杏林ですよ」
それぞれ思っているところはばらばらだが、全員が彼女を対等な目線で見ていることは明らかだった。
生まれも育ちも、何もかもが違う彼女を、この時代に名を馳せる武将たちが対等な存在だとみなしているのは、今まであり得ないことだった。
そしてそれは、信長も例にもれなかった。