第27章 魔王の提案
光秀たちが打倒将軍のための協力者集めや、戦略を練っている時。
信長一行は一足早く安土につき、執務に戻っていた。
秀吉が今やっているのは執務だけではなく、光秀が安土に戻った時の、彼の居場所を戻すための準備もしていた。
本人からは余計なお節介だといわれそうだが、自分がしたくてしていることなのだから文句は言わせない。
(それにしても、あの時の華音は……)
秀吉は、あの時の本能寺の夜に、光秀が倒れた時のことを思い出した。
『どなたか。肩、貸していただけますか』
それなりに力はある華音だが、光秀のような大の男一人を負担なく運ぶことは難しい。
そうでなくても女に運ばせるわけにもいかないので、秀吉が率先して名乗り出た。
本当に意識のない人間は重いと聞く。
力なく倒れた光秀の重さを肩に感じながら、秀吉は誰にぶつけるわけでもない悪態をついた。
『……ったく、終わった後だったからいいものを。俺たちがいないところでぶっ倒れてたら危なかっただろうが』
『…逆でしょう』
『……?』
『終わったから、皆さんがいたから、安心して力が抜けたんだと思いますよ』
(不本意だが)光秀と付き合いの長い秀吉よりも、華音のほうが光秀をわかっている気がした。
だというのに不思議と、そこに悔しさややるせなさは感じなかったのだ。