第26章 姫さんと狐の仲間探し
「お二人はどういったご関係か伺っても?」
「つい先ごろまで俺たちは共に、義昭様に仕えていた」
「いろいろあって俺は途中で抜けちまったがな。光秀とは、ゆくゆく殺し合うことを固く約束した仲だ」
「どんな仲?」
思ったことがそのまま口に出ている華音を横目に、元就の白い手袋をはめた手が何かを取り出す。
それが何かわからないほど、華音は無知ではないし、だてに軍医をやっていない。
「とっとと用件を教えろよ」
海外製の小銃を玩具のように弄ぶ元就が、どこか愉快そうに光秀に訊く。
「元就殿も人が悪い。用件なら既に承知のはず。貴殿のことだ。昨夜、本能寺で起きたことの一部始終を見ていたのだろう?」
「……千里眼かよ。怖え怖え」
幸村や佐助、陽臣と空臣だけでなく、元就もあの場にいたことに、華音は黒曜石の眼を見開く。
よく鉢合わせなかったなとも思ったが、おそらく陽臣がそうさせなかったのだろう。
「で、何か?俺に将軍殺しを手伝えってか?」
「いかにも」
「おいおいおいおい……。がっかりさせんなよ、明智光秀」
ふいに、元就の両眼がギラリと光った。
元就の持つ銃が光秀の頬をひたひたと触れるも、光秀の表情は睫毛一つ動かない。
華音は表情こそ取り繕っているものの、息が張り詰めているのは明らかだった。
「何かご不満でも?」
「ご不満大有りだぜ。俺の唯一の望みはな……お前や信長、謙信、信玄……力のある奴全員とド派手に殺し合って、日ノ本全土で血みどろの祭りをブチ上げることだ」
元就の声は期待の色に満ちていた。
軍医だった華音には、元就のような思想を持つ者に対して、納得や同情はないが一定の理解はあった。
何より、性別以外自分と同じ遺伝子の塩基配列の男が、四人の武将を育てた理由だったから。
「なのに、将軍一人手間暇かけて殺そうなんて地味な遊びを持ちかけやがって。話を聞いてるだけで退屈で死んじまうぜ。無駄足踏ませた詫びに、この場で俺に撃ち抜かれとくか?」
光秀の眉間に、元就の銃口がゴリ、と押し当てられた。