第26章 姫さんと狐の仲間探し
「___で、光秀どの。私なりに考えてみたのですが」
「ん?」
ある程度祭りを楽しんだ後、光秀がある人物と会合する刻限が近づいてくる。
その間、華音は相手がどういう人物なのか予想を立てた。
「今回、幸村どのたちが私たちに協力してくれたのは、光秀どのがまだ『織田軍の裏切り者』という肩書を背負っていることが前提です」
もし光秀が裏切り者の肩書を背負っていなかったら、この協定はお互いもう少し躊躇っていただろう。
光秀が今、『浮いた立場』であって初めて成立した協定だ。
そこでまた、新たに協力者に会うとしたら。
「約束している方は織田軍の味方ではないですよね。大丈夫なんですか」
「…見事な慧眼だが、大丈夫だ。なにせ、戦に目がない面白い御仁だからな」
「とりあえず貴方の『大丈夫』はあてにならないことはよくわかりました」
その時、提灯の明かりが遮られ、大きな影が二人の間に落ちた。
「___よう、光秀。祭りで待ち合わせとは粋じゃねえか。だがよ、もしもつまらねえ用件で呼び出したんなら、お前の首で落とし前つけてもらうぜ?」
華音は思った。
やべえやつが来た、と。
そして今夜のお祭りが血祭りに変わらないことを心から願った。
ただならぬ威圧を放つその男は、信長とよく似た紅の瞳で華音を見て目を細めた。
「なんだ?このお姫さんは」
「華音という。俺の連れ合いだ」
「華音です。よろしくどうぞ」
「へえ?女連れで祭りとはいいご身分だな」
「華音、こちらは毛利元就殿だ。名前は知っているだろう?」
聞き覚えのある名を聞いて、わずかに目を見開いて思わず元就を見る。
「亡くなったはずでは?」
「いい反応だ、お姫さん。そういうの、嫌いじゃねえよ」
「可愛いだろう?手を出すなよ」
「はっ、お熱いことで」
元就が喉を鳴らして笑うのに合わせ、光秀も軽やかに笑い声を立てるが、双方目が全く笑っていない。
そして残念なことに、華音には場を和ませる能力はないため、とりあえず話を進めることにした。