第26章 姫さんと狐の仲間探し
華音が憂いのある表情を見せたのは一瞬で、すぐに何時もの表情に戻った。
「だからこそ、今私がいる場所が大切で、尊いことを身にしみて感じるんです。ここで生きていくと、決められたんです」
義元の瞳が揺れ、やがて迷いが薄れたものになった。
「……わかった。華音がそこまで言うのなら、俺も意固地にならずに、もう少し迷ってみることにしようかな」
「ったく、めんどくせーな。いーから『帰る』って言え!」
「まあまあ。前向きに考えてくれるようになっただけでも一歩前進だ」
「ありがとう華音。嬉しかったよ。君が俺を追いかけてきてくれて」
義元の優美なしぐさで伸びてきた手が、華音の手に触れようとした時、光秀が彼女の肩を抱き寄せた。
「義元殿、ゆめゆめ勘違いなさらぬよう」
「勘違いって?」
「華音は幸村殿と佐助殿に頼まれ、優しさゆえにあなたの説得を引き受けたまで。今後一切、この娘に必要以上に近づくな」
「手を握ることくらいはいいでしょう?」
「では言い換えよう。常に百歩以上離れていろ」
「顔も見えないよ」
「では千歩」
「増えたよね」
「………」
自分を挟んで男二人が言い争いをしている光景に、華音はスンっと真顔になる。
ある意味何時もの表情だが。
「……お二人の御師範呼びましょうか」
「「………」」
現代でいうところの『先生に言ったろか』攻撃は効果てきめんだった。
「……そもそも来るのか」
「呼んだら来ますよ。普通に」
じゃあなんで俺たちの前には一向に姿を現さないんだよ、と二人は思った。
「会いたくないんですか?」
「…いや、今はほかに会うべき者がいる」
その計画は聞かされていなかったのか、華音と佐助、幸村は同時に首を傾げた。
義元への嫉妬心をしまい、気を取り直した光秀は、普段見る余裕のある笑みを浮かべる。
「各々がたも準備をしていただこう。今宵は楽しい祭りの夜になるからな」