第26章 姫さんと狐の仲間探し
押し黙る義元に、光秀は本題を申し出た。
「彼らを率い、ともに義昭様と戦ってはもらえないか?」
「義昭様と……?」
光秀は、将軍の陰謀のすべてを義元に語った。
将軍の魔の手が、織田軍を超え、越後にまで及んでいたことも。
義元の顔が強張ったのが分かった。
「義昭様の企ては信長様を倒すことにとどまらない。日ノ本全土を手に入れようとなさっている」
万が一そんなことが起こってしまったら、この国は終わりだ。
義昭は自分こそが至高の者だといい、その他の者をすべて等しく卑しい民として統治する。
朝廷が義昭を消そうと思ってももう遅い。
それができる者は、もういなくなっているのだから。
今の義昭がやろうとしているのは、自分を排除する存在になりえる将の暗殺。
織田軍だけではない。
上杉武田のほうにもその手は及ぶだろう。
長い沈黙ののち、決然とした声が森に響いた。
「わかった、将軍を倒す力になろう」
「……感謝します」
「当分は、当主を続ける必要がありそうだしね。……でも、俺は俺の都合で、勝手に謙信と信玄の元を離れた身。これ以上、彼らに甘えるわけにはいかない」
協力はするが、越後には戻らないという義元に、幸村と佐助は顔をゆがめる。
義元に反論したのは、意外にも華音だった。
「『お帰り』と言ってくれる人たちがいるのなら、それは甘えではありません」
「華音……?」
「ここにいる幸村どのと佐助くんはもちろん、二人の主も、他の家臣どの方も、貴方の帰りを待っている。それだけでは、帰る理由にはなりませんか」
華音は敢えて、『戻る』ではなく『帰る』という言葉を選んだ。
他でもない、義元の帰る場所を越後だと指していた。
「……不思議だな。君の言葉はどこか惹かれる」
「…私も、生まれ育った場所を失った身ですので」
現代には帰らないことは、だいぶ前に決めていた。
そこに後悔はない。
だが、故郷を直接懐かしむことができなくなるというのは、どうしても寂しいものだった。