第26章 姫さんと狐の仲間探し
「……何をなさっているんですか、義元どの」
目的地に着くと、小川の辺で義元は一人きりでうずくまっていた。
「華音……?」
「もう逃がさねーからな、バカ元!」
「観念してもらいます、義元さん」
「幸村、佐助、光秀殿まで……」
「諸事情あって、あなたに会いに来た」
で、何をしているのかと華音は義元に再度尋ねた。
「このキノコ、美しいと思わない?」
異様な形をした鮮やかな紅色のキノコを指さし、義元はにっこりと微笑む。
それに対して華音は、そのキノコを見た途端に端正な顔を引き攣らせた。
「お前……っ、のんきにキノコ狩りしてたのかよ!」
「これを美術品として収集しようと思って。どんな時でも美しいものは見過ごせないからね」
相変わらずのマイペースに、幸村も思わず声を荒げる。
「幸村、佐助。追ってきてくれたことはうれしいけど……俺は今後、自分ひとりの力で生活していくよ」
「それは、あまり賛成できません」
「右に同じ」
佐助は素早く義元の背後に回ると、羽交い絞めにした。
華音はキノコに伸ばしていた義元の手を、容赦なく叩き落した。
流れるような連携に義元はぽかんとする。
「義元どの。このキノコはカエンタケといって、触れるだけで皮膚がただれる猛毒のキノコです」
「へえ……華音は物知りなんだね。美しい上に猛毒を持っているなんて、ますますそそられるな」
「美しさと命を天秤にかけたらどちらも失いますよ」
華音の言葉には妙に説得力を感じた。
それもそのはず。
華音は定期的に、いつかの時に交流のあった女郎屋に通って病を持っていないかの定期検診をおこなっている。
評判を聞いた他の女郎屋からも呼ばれるようになったが、その中でも華音に従わない者もいた。
体に毒である成分が含まれる化粧品を使うなと言っても、これが美しいのだと言って聞かず、死んだ者もいた。
だから、今の状態の義元はとてもではないが放っておけなかった。
「義元どの、どうか幸村どのと佐助くんと一緒に、越後へ戻ってください。色々心配なので」