第26章 姫さんと狐の仲間探し
中間地点あたりまで来たところで、華音はくいと光秀の裾を握った。
「どうした、華音」
「……先、行っててください。少し休みたい」
「華音さん、大丈夫?」
「大丈夫、すぐに追いつきます」
「本当に追いつきそうで怖い」
そういったものの、光秀たちは華音を置いて先に行く気はさらさらない。
光秀は華音を抱え、そっと近くの座れる場所に下した。
「体力は追いついても、履物は追いつかなかったみたいだな」
華音が今はいていた履物は、険しい山道を行くのには向かないものだった。
その証拠に片方は破れており、華音の左足は出血していた。
「というわけで、俺の可愛い華音のために、少し休憩を挟ませてくれ」
「かわ……は?」
「華音さん、もしかして光秀さんと恋仲に……?」
「…ごめん、報告が遅れた」
驚いている幸村と佐助を横目に、華音は履き物を脱ぎ、懐に入れていた簡易的な救急セットを取り出す。
出血止めの薬を患部に塗り、化膿止めの効果がある薬草を当てて、包帯とともに巻き付ける。
手慣れた動きを見て、本当に彼女は医者なのだと幸村は感心した。
足の応急措置が終わったところで、次に取り出したのは稲穂色の大きな葉だった。
「それは?」
「履き物の補強にぴったりだと思って、山道を登るついでに取ってました。見た目はこれですがなかなか強烈な薬草で毒にもなりうるので、間違っても食べないでくださいね」
「誰が食うかよ」
冗談を言いつつも、その薬草となぜか持っていた藁で見事に強化された履物が完成した。
「すごい。器用なんだな華音さん」
「覚えて無駄にならないものは、基本的に覚えるので」
「……華音、今から俺たちが討とうとしている将軍の名前は何だ?」
「…………………佐藤さん」
「最初に撃った銃よりも壊滅的な掠り具合だな」
「誰だよ佐藤さん」
華音にとって将軍の名が『覚えても無駄なもの』であることが分かって少し顔が引きつったところで、巡回していた九兵衛が戻ってきた。