第26章 姫さんと狐の仲間探し
気を取り直して、本題に戻った。
「隠れて義元さんの後を追って居所はつかんだんだけど、あの人は『帰って来い』と言ってすんなり従う人じゃない」
「で、お前らと取引するために、俺たちはここに来た。
華音、明智光秀。義元を取り戻すためにお前らの力を借りたい」
「織田軍の敵であるお前たちのもとに、優れた将が戻ってくるよう手伝えと?これは面白い申し出だ。いったい、こちらに何の利が?」
「義昭を討つ時、俺たちもお前たちに参戦する」
「ほう……」
光秀の琥珀の瞳が、興味深そうに細められた。
現在の光秀たちの課題は、大きく分けて三つ。
一つは、将軍を討つための戦力を集めること。
もう一つは、将軍の居所を掴むこと。
そして、すべての駒をそろえたうえでの作戦を立てること。
光秀が考えていた案は、明日で有無が決まっている。
成功確率は五分五分といったところだが、もしうまくいって、その上さらに幸村たちの戦力が加われば、大きく有利になる。
むしろ、成功しないほうが難しいくらいだ。
思案する光秀に代わり、華音が質問した。
「理由をうかがっても?」
「お前には話しただろ。大名たちの謀反騒ぎは、織田軍側だけじゃなく越後でも起きた。待ちに待った信長との対決に水を差されて、俺たちの主君も腹を立ててんだよ」
華音は二人の主君である上杉謙信と武田信玄とはまだ二回しか会ったことがないが、なぜだかその姿がありありと想像できた。
そもそも、自分たちの領地に大名でもない者が介入したこと自体、苛立つ理由としては十分だっただろう。
ましてや、根も葉もない噂を後押しするためだけに起きたのだから。
「義元はおそらく、越後まで将軍の陰謀に巻き込まれたことを知らねえ。味方を傷つけることになると知ってたら、あいつは将軍に手を貸すような真似はしなかったはずだ。将軍を倒して落とし前を付ければ、あのボンボンが俺らのとこに戻ってくる理由ができる」
幸村の力強い言葉に、やはり義元には帰る場所があるのだと、華音は安心した。