• テキストサイズ

【イケメン戦国】白衣の戦姫

第22章 水色桔梗と鈴の祈り


「…ふ……っ」



僅かに漏れ出る華音の息遣いは切なげで、一層光秀の瞳に熱が宿る。
四度目の口付けは、貪るように華音の唇を求めた。
華音の濃い桜色の唇は、たどたどしくも拒まないそれがとてもいじらしい。
重ねた唇も声も、抱き寄せて感じる肌も体温も、全てが光秀の劣情を煽る。

男は綺麗なものを穢したくなる生き物だとはよく言ったものだ。
こんな時ですら、光秀は華音の美しさに魅了され、ドロドロに甘やかしたいと同時に、己の欲望の色に染め上げたいとも思う。
華音の中にある、穢しても穢しきれない何かを追い求めている。

だが、そんな光秀を一蹴するように、右耳に付けられた鈴の耳飾りがチリンと音を立てた。

二人の距離はゆっくりと離れ、口を繋ぐ銀の糸がぷつりと切れる。
光秀の心地よい冷たさも、華音の柔らかな温もりも遠ざかる。
光秀は、仕上げをするように華音の唇に小さくキスをすると耳元で囁いた。



「いい子にしていろ、華音。俺がそばにいなくても」



笑顔だけ残して、光秀は窓の向こうの闇に姿を消した。
足音も息遣いも、気配さえももう、感じない。
周りが静かな中、自分の心臓がドクドクと早鐘のように鳴り響く。
左耳が聞こえない分、脳に直接響いて治まることを知らない。
髪飾りと乱れた呼吸、騒ぐ鼓動の音だけが、光秀が今夜ここにいた証だ。



(光秀どのに言った誓いは嘘じゃない。だけど、)



光秀の味方でいることも、己の意志を貫き通すことも変えるつもりはない。

だが、

いつまで経っても、光秀との余裕のない口付けの余韻が消えない。

離れた唇は、甘くて、暖かくて、



少し 寂しかった。
/ 252ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp