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【イケメン戦国】白衣の戦姫

第20章 狐の喜劇


「義元さんが自分の意志で出ていったのは間違いない。だけど裏には、呼び寄せた何者かがいるはずだ」

「……あ」



華音の頭の中で、各地でバラバラに散らばっていた点が、徐々に繋がってきていた。
華音に思い当たることがあると思ったのか、佐助も華音に問い詰める。



「華音さん、知ってることがあれば教えてほしい」

「……分かった」



お祭りの舞台に義元が現れた時のことを話すと、幸村の顔に緊張が走った。



「あいつと一緒にいたのは、この国の大名と……『義昭様』って奴で、間違いないのか?」

「…ええ、豪華な身なりの。そして尿酸値とプライドが高そうな男だった」



険しい顔で遠回しな暴言を吐く華音に、佐助はこれは絶対何かあったと察したが、今は何も訊かないことにした。



「くそ、面倒なことになって来やがった」

「…やっぱり、あの男は足利義昭と見ていいんですね」

「その可能性が高い」



没落した将軍と言われた、室町幕府第十五代将軍、足利義昭。
天下布武を掲げ日ノ本の統一を目指す信長は当初、彼の後ろ盾になっていた。
しかしどうやら、身分の低い者が自分を差し置き力を振るうのが、将軍はお気に召さなかったらしい。
信長に戦を挑んで敗北し、京を追われて流浪の身となった。

今では、鞆の浦に身を寄せていると聞くが、例の大名が招いていた。
謀反の“疑い”が“確信”に変わっていく。
そしておそらく、光秀は昨日義昭を目にした時から、謀反を確信した。



「華音、大名の屋敷はどこだ」

「あっちの角を曲がって……」

「ありがとな」



場所を説明し終えると、幸村はニッと笑って駆け出した。



「俺も行かないと。また会えたら会おう、華音さん」

「佐助くん、気をつけて。幸村どのにもそう伝えてほしい」

「分かった」



真実に辿り着きかけている気がするのに、一抹の不安が拭えない。
この不安の正体は何なんだと思っていた時、



「もしもし、そこのお嬢さん。少しいいかな?」

「……っ!?」



口元を手で押さえられ、市の外れの林へと引っ張り込まれた。
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