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【イケメン戦国】白衣の戦姫

第16章 姫さんと狐の噂


「そこまでだ」

「「……!」」



振り上げられた秀吉の腕を片手で封じ、信長が鋼のような低い声を響かせる。



「華音、光秀の話は事実か」

「………」



いつかその質問が来ると分かっていた。
ここで否定すれば光秀はさらに疑われ、身動きがとれなくなるだろう。
だから何の答えが最善なのか、華音はずっと考えていた。
そして、



「はい」



短く答えた肯定の返事。
華音は真実を混ぜた嘘で答えた。



「ただし一つ誤解があります」

「言ってみろ」

「光秀どのは、責任を取ると言って私に求婚されました。今は検討段階です」

「責任とは何のだ?」

「泣かされた責任です」

「はぁ!?」



華音が光秀に泣かされたというのは、まあ事実である。



「華音お前…光秀に泣かされたのか!?今からでも遅くない、考え直せ!な?」

「はい。ちゃんと考えて、ちゃんと答えを出します」

「前向きに頼むぞ、華音」



話に一区切りついたところで、華音はほっと息を吐いた。



「…… はっ、面白い」



信長が堪えきれないといった様子で笑いはじめた。



「光秀、華音。悪くない余興だった」

「恐れ入ります」

(余興……)



割とちゃんと考えた答えを余興呼ばわりされたことに、華音はやや不満げな顔をした。



「華音、考え直したらすぐ俺に言えよ。こいつがつきまとうようなら、俺が退治してやるからな」

「分かった」

「少しは俺に気を遣え、華音。まあ我々のことはさておき、もうひとつご用件があるのでは?」



先程茶屋で、九兵衛が言っていたことを思い出した。
全員がその場に座り直すと、信長は脇息にもたれて口を開いた。



「光秀。貴様に急ぎ調べてほしい件がある」

「何なりと、我が主」

「西方の小国で、謀反の兆しがあるとの報が入った。和睦を結んだばかりの毛利の領土と、ほど近い場所だ」



華音は光秀から教わったことを思い出し、毛利の領土の場所を頭の中の地図に記す。
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