第5章 群青の飛球 *不死川玄弥*
夏の蒸し暑いグラウンドに部員達の力強い声が響き渡る。
【群青の飛球】
「しまってくぞーっ!!」
「「うぇいっ!!!」」
地区予選まで後1ヶ月程となったある日…
練習へと勤しむ部員達から少し離れたところではぁ、と大きな溜め息を吐いた。
「ちょっと玄弥!なんで溜め息!?」
「…っせぇな、こんなん大したことねぇよ。もういいだろ」
擦りむいた肘の傷に何枚も絆創膏が貼られている。さらに上から包帯を巻こうとするからその手を掴んだ。
「擦りむいたぐらいで包帯巻くかよ、普通。それに絆創膏使いすぎ、下手くそか」
「なっ…!!そんなこと言ったってマネージャーなんてやったことないんだから仕方ないじゃん!怪我人は怪我人らしく大人しくしてなさい!」
そう言って強引に腕を掴むと包帯を巻いてくる。経験がなくても世間一般的な手当てくらいできるだろう…人の話を無視して自己流の手当てをする、マネ経験ゼロの。
こいつが野球部のマネやるなんて言い出したときは正直驚いた…けど、同時にすげぇ嬉しかった。こいつのこと特別に想ってるから…だけどは俺のことなんて幼馴染みとしか思ってないだろうな…
「これ、でよしっ!はい、出来たよ!」
「…これじゃ腕が動かせねぇ。」
ぐるぐる巻きにされた肘をに突き付ければその横でぶふっ、と吹き出して笑いをぷるぷると堪えている甘露寺さん。笑ってないで助けて欲しいんだけど…
「…ちゃんっ、擦りむいた時は絆創膏だけでいいんだよ?あと…消毒が先だわ、ね……ぶふふっ」
「え!?消毒忘れてました?ご、ごめん玄弥やり直す」
こんな調子がいつまで続くのか…
結局、甘露寺さんに手当てをし直してもらった。
だけど、女慣れしてねぇから触れられるのがめちゃくちゃ恥ずかしかった…やっぱ平常心でいられんのはだけだ。