第8章 8
「わっ」
「な、なんだ!」
良正は車のスピードを落とすと、慌てて路肩に停車した。
明らかに地面が揺れたのだ。
「地震かな」
「やだ、こわい」
良正はスマホで地震情報を調べ始めた。しかしどこにも速報はない。
「おかしいな。でも確かに、地震にしては妙だったよね。いきなりドスンときて、その後何もないなんて」
「私、嫌な予感がする。なんだろう、よくわかんないけど、なんだか怖い」
ウゥ〜と、吠えるようなつんざくような音が鳴った。消防署のサイレンだ。
ここいらでは、何かあるとこのサイレンが鳴る。熊が出ただの、老人が徘徊しているだのと警告するのだ。
だから有羽と良正も耳をそばだてた。マイクの音はひび割れて、あまり聞き取りやすいものではない。2度、3度と繰り返し放送されるのを聞いて、内容を判別するのだ。有羽もよくよく聞いた。
1度目はよくわからなかった。
2度目、なんとなく聞き覚えのある単語が拾えた。
3度目、話の理解ができなかった。
4度目、有羽は青ざめて車から飛び出した。