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わたしは漁火

第8章 8


「有羽ちゃん、どうしたの!」
突然の行動に良正もあわをくった。

「崖が、崖が崩れた!崖が崩れたって言ってる!」
有羽は明らかに取り乱し、右往左往しながら頭を抱えた。

「それ、そんなに騒ぐこと? 有羽ちゃんの家は崖から遠いじゃないか、大丈夫だよ。あの辺は人通りもないし…」
良正は有羽を落ち着かせようとしたが、有羽の声は焦りのためにどんどんと高くなっていく。まるで自宅が爆発したとでも言われたかのようなパニック。有羽は目に涙を浮かべながら金切り声をあげた。

「ダメだよ!わかってない!何もわかってない!崖には居るの!居るに違いないのに!かわいそうに!きっと下敷きになってる!でも多分、きっと、わざとなんだよ!ああ、私のせいだ!私がここを出ようとしたから、彼は生きるのをやめたんだ!海があればどこでも会えるって言ったくせに、嘘つき!嘘つき!!最初からこのつもりだったんだ!!嘘つき!!私に初めて嘘をついた!」
「彼って一体誰のこと…?なに言ってるの?わかんないよ有羽ちゃん!」
「わたし、私は漁火だもの、いつでもそこにいなくちゃいけなかったんだ!なのに出ていこうとした!だから彼は…!ああ、こんなのってひどい!」
「有羽ちゃん待って!」

良正の静止も聞かずに有羽は駆け出した。
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