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わたしは漁火

第8章 8



「ねえ、もう早く行こうよ」
なかなか終わらない別れの挨拶にしびれを切らし、有羽は車に乗りこんだ。
じゃあ、と良正は車を出し、有羽の父母は手を振って見送る。有羽も両親にひと通り手を振り返したあと、晴れ晴れとした顔で前に向き直った。

ようやくこの田舎を出られる。それがとんでもなく嬉しくて、心が踊るようだった。子どもの頃から夢見ていたのだ、きらびやかな都会で暮らすことを。もちろん東京などに比べればS市も劣るのだが、それでも有羽にとっては憧れそのものだった。
有羽は期待に目を輝かせた。秋晴れで天は高く、涼やかで爽やかでまっすぐな天気だった。

が、そんな空がドドンと震えた。
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