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わたしは漁火

第4章 4



〜ピンピロパンポン〜

ひび割れたメロディとともに電車がホームに着いた。長い間乗車して疲れた尻をさすりながら、有羽は電車を降りた。S市の駅は大きな駅ビルが連なる中にあり、どこを見ても人が多い。大手チェーンカフェの行列をすり抜けて、有羽は待ち合わせ場所に向かった。

「有羽、こっちこっち」

待ち合わせ場所の赤いオブジェの前。良正が大きく手を降った。

「袋井くん、久しぶり」
「うん、久しぶり。4ヶ月ぶりかな。荷物それだけ?ホテルに泊まるんだよね?」

S市は有羽の地元から電車で数時間の距離。日帰りには適さない。有羽は1泊分の荷物をトートバッグに詰めて持ってきていた。

「うん、1泊ならこの程度だよ。今どきのホテルって何でも置いてあるし」
「そっか。あ、僕が持つよ」

良正はスッと手を出した。断っても持ちたがるのがいつものことなので、有羽も「ありがと」とバッグを差し出した。
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