第6章 Premier amour 国見×及川
それから数週間
例のBL騒動は収まるどころか広がりまくって、ついに俺のクラスでも話題が出るほどになっていた。
「国見、これ絶対国見じゃん」
「誰だよ作者、絶対うちの生徒だよな」
「才能あるけどBL描いてるなんてバレたらやべーよな」
「国見、腐女子のオカズにされてんじゃねーの」
クラスが騒がしい
うるさ、本当最悪
面倒ごとには巻き込まれたくないのに
誰がこんなこと…
はぁ…
一刻も早くクラスから立ち去って部活に行きたいのに、今日に限って日直。相方は同じクラスかどうかも知らない地味な子、確か橘さんて言ったか、瓶底眼鏡の二つ結びでクラスの子と話してるのも見た記憶がない。
だる。
日直の仕事を終え、日誌を書いている彼女の机に向かう
「あのさー、終わったから
ガタンッ
急に俺が話しかけてビックリしたのか、彼女の腕が机の上のカバンに当たり、カバンの中身が床にぶちまけられた
反射的に拾おうとすると
「さっ触らないで!!」
橘さんはカバンの中身を庇うように床に覆い被さる
「え、なに」
あまりの拒絶に怯む
と、同時に違和感
そんなに隠さなきゃいけないもの?
そこに何が…
俺の知ってるやつがあの漫画を?
まさかこの子が
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
彼女はカバンの上に覆い被さったままブツブツと呟く
「何か俺が見たらヤバいもんでもあるの?」
彼女は何も答えない
「見せろよ」
力づくで彼女をカバンから引き剥がそうとする。揉み合いになり、橘さんの眼鏡が吹っ飛ぶ
カシャーン
「あ、わり…
眼鏡1つでこんなに印象の変わる人を初めて見た
髪も俺との揉み合いで乱れ、息が上がっている
ちょっとムラっとした
でも今はそんなことよりこのカバンの中身
彼女の鞄から飛び出したノートの中を一冊ずつ確認する
すると他のノートと見た目は同じ一冊
めくると 俺 俺 俺 俺
彼女のノートは俺でいっぱいだった
橘さんは下を向いて座り込んでいる
「君が…あの漫画
「ごめんなさいごめんなさいもうしません死にます許してください」
橘さんは泣きながら土下座する
「死ななくていいけど、もう1人謝ってもらわないといけないから」
及川さんに電話する
「作者…見つかりました」