第22章 adultère2 赤葦
「身近なテーマだからこそ、経験のない事は想像で書く事はできないし、書いたとしてもリアリティがないってすぐにバレてしまう」
『では、Twitterでも話題になった、最新刊に登場するスーツ姿の男性がネクタイを緩めながら…っていうのも実話ですか?』
「ご想像にお任せします」
そう言う彼女と目が合った
確かにあれは俺だ…けれど、ハツコイも実体験だったとは
彼女の初めてを奪った男
ハツコイの男にレイプされるように処女を奪われた…?
そいつはバレー部?
モヤモヤとした感情が押し寄せてきて、ハッキリと気付いた
俺は歩が好きだ
誰にも渡したくない
過去の失敗に臆病になって、彼女を他の男にとられるなんて絶対に嫌だ
一刻も早く伝えなければ
とは思うものの、発表会の後にはアフターパーティがあり、彼女は多くの著名人や監督などに囲まれて近づく事はできない
彼女も慣れない場所で緊張しているのだろう、片手に持ったシャンパンをぐいぐい飲みながら、愛想笑いを浮かべている
少し時間が経って、周りの人だかりが少なくなった頃、彼女は辺りをキョロキョロと見回して、俺の姿を認めると怪しげな足取りでこちらに近づいてくる
俺も彼女に駆け寄り
「先生、飲み過ぎですって」
と声をかける
「あかーしさん」
歩は俺の腕を掴みながら、トロンとした瞳で見上げてくる
たまらなくなって俺は
「先生、だいぶ顔色が悪いですね…スタッフには伝えますので、休憩しましょう」
そう言って、彼女を連れて会場を出た
エレベーターに乗ると
"これより上の階には宿泊者のみ"
と書かれた部分に、カードキーをかざして上層階のボタンを押す
歩は妖しく微笑みながら、俺の手からカードキーを取り上げ
「あかーしさん、部屋とってたの?」
と言いながら、俺の首元に抱きついてくる
「セックスする気満々じゃん」
耳元で囁かれた
ゾクリ…
いつだってそうだ
こうして彼女は俺の理性を軽々と破壊する
俺は乱暴に腕を掴んでエレベーターの奥に彼女を押しつけ、貪るように口付けた
クチュ…チュ…ジュル…
アルコールの香りがして頭がクラクラする