第21章 touch2 宮侑
『デキ婚らしいわ、めっちゃ意外やろ?』
「まじで?!北さんがデキ婚?!」
『しかもな…2人の馴れ初め聞いたんやけど、北さん…人妻やった嫁さんのこと略奪したらしいで』
「待て待て!お前、それどこの北さんの話してんねん!それほんまに俺らの知ってる北さんか?!北さんが人妻略奪からのデキ婚て!」
『いやほんまモンやった、びびったけどな〜
あ、あと…侑に言うといてって北さんが』
「なにを?」
『お前の気持ち、よう分かったわって』
お前の気持ち…
それは多分10年前俺が北さんに言うた
奪ってでも手に入れたいほど歩に惚れてるって話のことやろう
そうか…北さんにも、奪ってでも手に入れたいヒトが現れたってことなんやな
俺は治との電話を切ると歩と一緒にリビングに入る
「歩、聞いてくれ!北さんが…」
「人妻略奪して、デキ婚しはったん?」
「何で知ってんねん!?」
「いや、めっちゃ大声で喋ってたやん」
「せやな、あーマジでびびった!!しかも…北さん、俺の気持ちよう分かったって」
「ほな北先輩も、嫁さんの元旦那に泣きながらスライディング土下座しはったんかな?」
「おい、それ俺のことイジってるやろ」
「あははイジってないわ、あれはあれで普通に嬉しかったけど」
そう言って歩はイタズラっぽく笑う
ー泣きながらスライディング土下座
それは10年前、歩を略奪した俺がロッカールームにおった北さん目がけて
「北さんっ!本っっっまに申し訳ございませんでしたぁぁぁ!」
とスライディングしながら土下座したってゆーエピソード
しかもそん時の北さんは、めっちゃ冷めた目で俺を見下ろして
「侑、それなんのパフォーマンスか知らんけど、派手に謝ったら罪が軽くなるわけと違うぞ」
って言うた
その目が怖すぎて、俺は凍りついた
「パフォーマンスはええ、お前の本音言うてみろ」
そう言われた俺は土下座したまま答える
「歩のことが好きです…」
「お前を好きやった歩はいつも辛そうな顔しとった。好きな女にあんな顔させたらあかん」
「…分かってます、俺が悪いんです…それでも、もう歩を離したくない、奪ってでも手に入れたいんです…相手が北さんやったとしても」