第6章 telephone
「……」
『……』
「………アンナ…」
僕は彼女の両頬に手を当て
上をむかせた
瞳を真っ直ぐに覗くと
アンナがどんな言葉を望んでいるのかが
手に取るように分かった
「……」
けれど
僕は大きく深呼吸すると
精一杯の笑顔でこう言った
「………すごいじゃないか………おめでとう……」
アンナの瞳が失望に翳るのを
僕は初めて見た
『………礼音…?』
彼女の顔を見ていられなくなった僕は
アンナを抱きしめて言った
「……アンナなら………絶対に…もっと上に行けるよ………これからも応援してる…」
アンナの指が
ゆっくりと僕の背中に回された
『………ウン…………ありがとう……』
「……」
震える声が
心臓を締め付ける
全てを奪ってしまいたい衝動を必死で堪えながら
僕はアンナの身体を強く抱きしめた
腕の力を緩めると
アンナは顔を上げた
彼女の瞳には
もう
さっきのような影は見当たらなかった
『…………ね……………キスして……』
アンナはそう言うと
悪戯そうに微笑んだ
僕は請われるまま
彼女の柔らかな唇にそっと口付けた