第6章 telephone
『……』
「…………ぁ………先に…出て……」
『……』
「……………アンナ……?」
『…………ゴメンなさい…』
アンナは
窓際のテーブルに置いてあったバッグの中から携帯を取り出すと
通話ボタンを押した
静かな部屋に
電話口の相手の声が漏れ聞こえた
相手は興奮した様子で
英語で捲し立てている
アンナは冷静に
二言三言英語で返事をすると
電話を切った
『……』
暗くなった液晶画面を見つめたまま
アンナは動かなかった
「……アンナ…?」
『……』
俯いたままでいる彼女の
電話を持つ手が微かに震えていた
「………大丈夫…か…?」
『………マネージャー……から…』
「……」
『………次の…○ラミー賞………ノミネートされた……って…』
アンナはそう言うと
辛そうに眉を寄せて
唇を噛んだ