第5章 NY
彼女のポリシーは僕と共通する部分も多く
同じエンターテイメントの世界に生きる者として
僕は彼女を心から尊敬していた
東條 アンナは
僕の憧れであり
目標でもあると同時に
互いに実力を認め合う戦友のような存在でもあった
そして
それ以上に
僕はずっと彼女の事が大好きだった
あまり頻繁ではなかったけれど
数日まとめてスケジュールが開いた時には
僕はアンナに連絡をして
彼女の居る場所に会いに行った
ニューヨークはもちろん
シカゴ
LA
パリやミラノ
ロンドンにも
そして
年に一度
彼女は決まって
ライブを行う為に来日をした
その時にも
もちろん僕達は一緒に過ごした
どんな場所でも
彼女は相変わらず彼女のままで
どんなに久しぶりに会っても
まるでつい先日会ったかのように振る舞ってくれるアンナの存在は
ドロドロとした日本の芸能界を生き抜く僕の癒しであり
心の救いとなっていた
僕と一緒の時のアンナは
普段の彼女とは全くの別人だった
冷たく完璧主義な仮面の下には
天真爛漫で甘えん坊の素顔があった
彼女が
どうして僕に対して
そこまで心を開いてくれたのかは分からない
そもそも
どうしてあの夜
僕を家に招いたのか
どうして
あの歌謡祭のステージで僕を相手に踊ったのかも
今となっては分からなかった
強いて言うなら彼女は
僕達2人の相性の良さを
出会ってスグに見抜いていたという事なのだろうか
長い付き合いの中で
夏生や健人にも
彼女との仲は正直に伝えてきた
" あの " 東條 アンナと僕との関係を聞いた2人は
最初はとても驚いていた
けれど
彼女がニューヨークへ行った後
初めて日本に帰って来た時に改めて紹介してみると
3人はスグに打ち解けた
そして
彼女が日本に滞在している間は度々
一緒に食事に行ったり
飲みに行ったりする程の仲になった
僕の仲間達のダンススキルや歌唱力を
アンナが始めから認めてくれていた事を聞いた時
僕はとても嬉しかった