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ヒロアカ短編集

第4章 バレンタイン 轟焦凍の場合




ガララ、と玄関の引き戸を開けて靴を脱ぐ。



「お、お邪魔しま…す…」

轟「この時間まだ家に誰もいねぇから」

「そ、そうなんだね」



消え入りそうな語尾で挨拶をするも、轟からは在宅されてる人が居ないと告げられた。

幾重にも隠して奥底へとしまい込んだ気持ちがふわふわと浮上して告げるつもりがないにも関わらず緊張する。

いや、告げるつもりがない訳ではなく、勇気がなくて今の関係性に甘んじているのだ。
クラスの中で1番轟と仲がいいという関係性に優越感を抱いて満足している。
だから好みも何となくわかったし、煙たがられると思いつつ精一杯の勇気を出してロールケーキを渡したのだ。
それで100点満点の合格点だと家に帰ったら飛び跳ねながら自分を褒めようと思っていたのだ。

轟家には数回しか上がったことがない。
と言っても玄関先で終わるような用事ばかりで、それこそ自分の親の繋がりでおすそ分けのやり取りをする程度。
轟の自室に入るのは今回が初めてで、自分の気持ちと好意を寄せてる男性の部屋に初めて上がるというダブルパンチで目の前がクルクルと回っていた。



轟「コレはなにと合わせるのがオススメなんだ」



スクールバッグを置いてそのまんま自室の開き戸に手をかけながらピッと指さした箱にドキッとする。



「へぁ?あ、焙じ茶があれば美味しいと思うよ」

轟「そんな緊張すんなよ、取って食ったりしねぇから」



ニヤリと笑いそう言い残すとパタリと扉が閉じられた。
含みを感じさせる顔が目に焼き付いて口があんぐりと開いてしまった。
こんな所を見られてはきっと轟もげんなりしてしまうかもしれない、と慌てて口を閉じる。
いや、げんなりしたって関係ないんじゃないか?
だって彼は私のこときっとただの仲のいい女子としか認識してないはずで。
でも”きっと”と思ってしまうあたり私もどこかで期待してしまっているんだな。















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