第4章 バレンタイン 轟焦凍の場合
轟「またせたな」
カチャリ、とテーブルに置かれたのはホクホクと湯気を立てている焙じ茶とデザートフォークがふたつ。お皿もふたつ。
「ありがと、じゃ、開けるね」
カサカサと包み紙を取ると出てきたのは、粉砂糖が薄らとまぶされ緑色のロールケーキ。
中のホイップも薄らと緑色しているのと、茶色のチョコレートのマーブルになっている。
そしてそれがふたつ。
「別に一緒に食べようと思った訳じゃなくて!
お姉さんと一緒に食べて貰えたらと思っただけだから!
私は食べないよ!」
轟「俺一人食ってるところを見られるのか」
「そ、そうなるね」
轟「食っちまえばなかったことになるだろ。
美味そうだ、食おうぜ」
「う、うん」
お姉さんごめんなさい、と心の中で謝った。
機会があればまた今度持ってこようとも。
お皿に移してフォークを取りいただきますと声をかけてくれた。
どうぞ、と返事をするとフォークがふわっとロールケーキを小さく別けた。
口に運ぶと柔らかなスポンジから抹茶の香りが鼻を抜けた。
次に舌触りの滑らかなホイップクリームが抹茶の苦味とチョコの甘さを感じさせる。
この感じからするとほぼ抹茶を使ったんだろうと思った。
とても抹茶が濃厚で甘さは極力控え目、焙じ茶が進む。
ズズ、と焙じ茶を啜ってふぅ、と一息。
隣からは感想を聞かせろと言わんばかりの不安そうな表情の戦場。
轟「…正直、「やー!待って待って怖いから私も食べる!」」
言い切らない間に勢いよくフォークを持って同じものをパクッと食べる。
んー♡と言う感じで咀嚼をしている。
「美味しい!ね!」
二パッと笑顔で同意を求めてくる。
正直これなら食べれるし毎日でも出してもらいたい。
店で人気商品になるのでは、と褒めたたえたかったのだが、食い気味に感想を先に言われてしまった。
あまりに自分で作ったものが美味しかったのか緊張は何処吹く風で、いつもの笑顔とテンションに戻った戦場。