第7章 残されていた愛 繋がる愛
最後に猗窩座が訪れた時から3度目の新月を迎えた無限城。
その間、鬼の始祖 鬼舞辻 無惨は一度も猗窩座の気配も精神も入れない呪いや支配が解かれたような状態から一度も感じることが出来ないでいた。
しかも、彼が起こしたと思われる戦いの痕跡に鬼の消滅した痕跡が一緒にあるという事
この異常事態に鬼舞辻は怒り、彼以外の十二鬼月、上弦、下弦ともに緊急招集した。
べべん
琵琶の音と同時に猗窩座以外の十二鬼月達が、洋装の鬼舞辻の前に平伏する。
鬼舞辻は怒り狂った様子でいつもと比べ物にならないどす黒い怒りの重圧を放ち、オーラで周囲の明かりも見えないほどだった。
「猗窩座が裏切った。血眼で探せ。
連れている女は日神楽家の生き残りだ。
女は今や一般人だがやつの能力は厄介だ。」
「女の血には触れるな。私の術を消す能力が何処にあるか解らない。
今後の研究のためにも捕らえておきたかったが、猗窩座がそれを拒否したのだ。
女に絆され、私の意図から女を遠ざけ逃走したのだと見ている。
二人とも私の前に連れてこい。私と貴様ら十二鬼月が揃う前で黒死牟に殺させる。
よって上弦の参はこれより空席と成す。
即刻かかれ。」
「「「「御意」」」」
全員が跪いて頭を垂れる。
いつも平然と構えている上弦の鬼達も上位二人を覗いて冷や汗をかくほど、その場の空気と重圧は凄まじいものだ。
そこへ長身で橡色の色素の薄い髪で教祖の装いの男が扇子で口元を隠し張り付けたような泣き顔の表情で語る。
虹色の瞳に『上弦』『弐』の文字。
上弦の弐 ”童磨”である。
「えぇ~、猗窩座殿、一番のお友だちと思ってたのにぃ。そんなに馬鹿だったなんて失望だねぇ。
それに、人間の女の子連れてるなんて!
猗窩座殿の心を射ぬいた女の子って凄く興味がある。
凄く美味しそうなのに食べれないのは残念だなぁ。」
「……童磨。………無惨様の御前であるぞ。」
「黒死牟殿は相変わらずお堅いねぇ。
でも、楽しみでやりがいのある任務だ。」
「無駄口を叩くな、童磨。
そして連れてくるのはお前が適任だろう。
だが見つけて捕らえるのは誰でも構わん。
見つけてきたものには私の血を分けよう。」
「御意」
鬼舞辻の号令の元、琵琶の音と共に黒死牟を除く鬼たちは強制的に退散されていった。