第6章 その身体に刻まれた過去
欲しい言葉、嬉しくなる言葉をいっぱいくれる。
それが意図したものでもそうでなくても堪らなく嬉しいし、安心する。
「……はい。わたしも、猗窩座が再び鬼の心に戻らぬよう、お側を離れません。」
そう告げると、過去の断片を思い出したのか猗窩座も一瞬戸惑った波動を感じた。
猗窩座が体を起こして、わたしの頬を撫でる。
優し笑みで見つめる表情に変わると、その青い瞳に涙が溜まっていた。
その顔に手を伸ばして両手で包んだ。
「あなたより早く死ぬことは出来ませんね」
とお道化て笑いかけると
「当たり前だ。俺に死んだ姿を見せるなよ」
いつかの夜の様に寂しさを含んだ声。
何かを振り払うようにして頭を振り
わたしの横に身体を移した。
「今日はもう休め。今夜も移動だ。もう明後日は新月だが、俺はもうあの場所へは帰るつもりはない。
これからは俺の血の呪いを解き、桜華の体質の情報をいち早く手に入れなければ状況はどんどん厳しくなる。
桜華の体力も心配だ。早く定住できるようにしたい。」
わたしの血を飲んだからと言って猗窩座がいつどう変化するのかも何も解らない手探りの状況。
場合によっては命にも関わるからこそ、早くこの状況を変えなければならない。
その父と関わっていた医者の鬼が今どこにいるのかも全く情報がない。
一刻も早く事を成さねばと再認識した。
さぁ、服を整えて寝ようと思った矢先
「こんなところでヤるような、大胆で厭らしい桜華は見れなくなるけどな。」
途中、一瞬その事もよぎったけど考えないようにしてたことを掘り起こされた気分で羞恥心で真っ赤になった。
「猗窩座!それは言わないで!」
穴があったら入りたい………
「案ずるな。こんな山奥、何かいても獣ぐらいだ。」
「それでも恥ずかしい……」
思わず両手で覆った隙間から、猗窩座を見ると、今まで見たことないくらい心から笑っているようで、悔しいけど嬉しかった。