第5章 傷と罪は共に背負うモノ
その言葉は猗窩座が、
今までの桜華の性分や立場、
鬼である自分を連れているという現状が鬼殺隊にとっていかに重大なことかという自責の念も混じっていた。
桜華の方も、猗窩座の過去を、そして、黒死牟から聞かされていた、自責の念が強いと聞かされていたために、
自分のせいでと思っている節があるということも理解していた。
「はい。わたしたち一族のために多くの犠牲を出してしまった以上、もう御当主に顔向けができません。
猗窩座と逃げていきながらえることを選んだのはわたしがそうしたいと思ったからです。」
「そうか……。」
「猗窩座は、もう、戦いに身を置くことはしないのですか?」
「黒死牟から10年以内に決闘に来いと言われた。
さもなくば、俺たちを殺すとも言われた。」
「平穏な日はないと思えとわたしも言われました。」
「平穏なんて所詮空想だ。どんなやつでも常に薄いガラスの上で綱渡りしながら生きている。」
その言葉にのせた感情が悲しいものであることを
その言葉が、猗窩座自身を作った過去であることを
夢で見てきたからこそ
その胸のうちを思うと胸に突き刺さる。
「……そうなのかもしれませんね。だからこそ、今を感謝して生きていかなければならないのかもしれません。
人は同時に物事を考えるのは困難ですから。」
「なぜ、そう思う。」
「心も身体も運命も全てが時を越えて繋がっています。
全ては選択の連続です。
間違いがあっても、愛をもった強さを忘れなければ
誰だって遠回りしようが幸せに向かい進むことができるのだと教えられました。
そして、それを最近よく実感しているのです。」
猗窩座の首に回している腕に力と想いを込めて甘えるように頭を寄せると、上腿を支えている右手が引き寄せるように力をいれた。
「愛をもった強さか……。」
そう呟いた声に少しばかり心に光が指したような波動を感じて桜華は伝えたいことが伝わったような安心した笑みを浮かべていた。
"あなたの力だけの強さだけでは今のわたしはいない"
"あなたの愛をもった強さ、意識、選択が、わたしを救った"
という事実を。