第16章 因縁の終焉
童磨の笑顔が深く、冷たくなる。狛治の闘気に負けじと、周囲の冷気が一気に凝縮され始めた。
「血鬼術・凍て曇り」
先ほどまでの威力とは別物の冷気の刃が狛治の刃を纏う拳とかち合う。
バキィィィン!
蒸気と化して辺りが煙に覆われる。
今までの戦いが赤子の戯れだと言わんばかりの異次元で鮮烈な冷気と熱気のぶつかり合い。
「上弦と戦うということは、こういう事なのか…」
二人を背後に守る天元は目の前で繰り広げられている戦いに注意を払いながらも、隙のないその戦いを見取り稽古をするように観察していた。
「だが、まだまだ、狛治のやつ、余裕があるな。
俺なんかじゃぁ、相手にもならなかったって事か…」
ふと視線を横にすると童磨と目が合い、重ねられた対の鉄扇が向けられる。
「暇そうじゃないか…一緒に遊んでおくれよ」
狛治の攻撃を寸で避けた瞬間にそれは放たれた。
「血気術・結晶ノ御子」
一度の動作で5体も生まれた氷の分身の3体が天元らを取り囲む。
「ちっ…厄介だな。コイツからもアレと同等の攻撃が出来るのかよ…」
手持ちの爆弾を爆破させて、氷の分身を吹き飛ばしながらも、二人を抱えて飛びのく。
「天元さん、カナエさんだけでも隠に託せませんか?彼女はもう万全ではないです」
脇で抱えられている桜華が天元に尋ねた。
先ほどまで戦っていた分、攻撃の能力や範囲が解る分、戦況が激しくなれば間違いなく二人抱えたままでは足手まといになるのが目に見えたからだ。
「もうそろそろ来る。姫さんは動けるのか?」
「移動くらいなら…とにかく、わたしがここから離れるわけにはいきませんので、足手まといににならないようにします」
「無理すんなよ。あとで狛治に恨まれたらたまったもんじゃねぇわ」
軽口が心に余裕をもたらす。
その後に感じた隠の気配に気づいた桜華は天元の守りの影でカナエを引き渡した。
「必ず帰ってくるから、わたしが帰ったら、診てもらいますからね」
「…桜華さん。…約束ですよ」
「おねがいします」と、隠にカナエを引き渡す。
駆けだした瞬間に再び轟音が周囲を揺らした。