第12章 血戦
「いい子だね…。俺の、万世極楽教は"穏やかな気持ちで楽しく生きることこそ神の御心にかなう""つらいことや苦しいことはしなくていい"…。まさに楽園でしょ?
ここでは好きに気楽に生きていい…。」
「はい。」
「悩みはないのかい?」
「何にも縛られない場所で生きていきたくて…ここへ参りました」
「うんうん…。ここには君を縛るものはない。
好きに生きたらいいよ。
君の入信を歓迎しよう。」
「ありがとうございます」
襖が開かれ、案内人が彼女を案内する。
童磨に一礼して、彼女は部屋を出た。
瞳の上弦の弐の刻印が濃々となり、虹色が鋭く光った。
「いい子が来たね…。しばらく泳がせておいても楽しいね」
再び隣の襖に女性の信者の声がした。
「いいよ。入っておいで」
襖が開くと、後ろに長い髪を束ねた壮年の女性が顔を見せぬよう首を垂れた。
「教祖様。お探しの者が見つかりました。」
「連れておいで。僕はここを出られないからね」
「かしこまりました」
「生贄なんだから、傷つけてはいけないよ」
「はい。ですが…。」
「何か問題があるのかい?」
「はい…よろしいでしょうか?」
「おいで」
女性の肩を抱き、耳元に寄せられた口からこぼれた言葉で、その瞳孔がみるみる開き、口元から笑みが出てくる。
「構わないよ…。それでも、連れておいで」
「かしこまりました」