第9章 月詠の子守唄
皆が広い居間に集まり、狛治と桜華、宇髄と胡蝶、その後ろに宇髄の妻3人と向かい合わせに座った。
先ほどの雰囲気とは異なり、緊張感が部屋を支配した。
改めて互いに自己紹介を済ませ、先ずはと、桜華の家の事を知っている範囲で話し、これまでの経緯を話した。
そして、二人が使う呼吸術と鬼から人に戻った経緯を話した。
「日の呼吸、月の呼吸、結の呼吸....どれも今までに聞いたことがねぇ。見たところと今の話じゃぁ、派手に主軸そうだが....」
宇髄が過去の記憶、他の柱との会話、柱や産屋敷で借りて読んだ書物をどう思い返しても1字1句としてその名を聞いたことがない事に首を傾げた。
そして、狛治が口を開く。
「その日の呼吸の剣技を身に付けていたのが、桜華の父親だった。
俺でも未だに信じられないが、6年前に死んだはずの桜華の父親が、亡くなった頃の姿と古い時代の侍の姿で俺の夢に現れたんだ。
その時に桜華を守れと斬りつけられた時にこの痣ができた。」
己の体に日の呼吸の素質を刻まれた瞬間を思い出しながら女将が出した浴衣から覗く赤い炎の痣を見せつける。
「そして、この痣は生前の彼女の父親にも、古い時代の侍の姿の時にもあった。
前日神楽家当主がなぜ力を持っていながら
鬼から家族を守れなかったのかと
その力を今まで使わなかったのか...
ここから先は俺の見解だが、
上弦の鬼として大量に鬼舞辻 無惨の血を持っていた俺は、無惨の昔の記憶に触れたことが幾度もある。
無意識領域までに恐れ慄いていた、唯一無惨に"死の恐怖"を植え付けた侍と、その古い時代の侍の姿と姿も形も酷似している。
恐らく、日の呼吸は無惨の恐怖故に滅ぼされ、無惨を滅せなかった侍が何らかの形で唯一それを守り、今まで日神楽家に400年もの間"舞"として受け継がれてきた。
俺はそう思っている。」
「それを調べるために向かおうとしているのが、日神楽家創設当時から400年もの間、無惨の精神支配から逃れ、人を喰らわず鬼の研究をしている女性、"珠世"という鬼のところです。」
桜華が静かに付け足した説明に、これから向かう所が鬼であると知った5人は訝しげな表情で聞いていた。