第8章 魂の雪蛍
狛治たちが戻ってきたのはかき氷を食べ終えて、談笑している頃だった。
「すまんみんな、遅くなった。」
と後頭部を掻きながら、悟が狛治と共に戻ってくる。
「よし!!どんどん回ろう!!」
と射的や、くじ引き、飾り屋などが立ち並んでいるのを片っ端から見て回った。
狛治は、6人の兄妹の賑やかな様子を眺めながら、再び桜華の手を握った。
気付いた桜華は少し頬を染めてその手の主を見上げると、
「こんな人混みだ。はぐれるなよ。」
と優しい顔をしていった。
「はい。
先ほどは、何処に行ってたのですか?」
「それは、内緒だ。」
「どうして?」
「さぁな。」
と、どこか楽しそうに前を見て目を細めていた。
トンボ玉の工房が出している屋台で淡い藍色に金箔が入ったトンボ玉の首飾りが目に入り、足を止めると
「今の浴衣に似合うな。」
と、後ろからその首飾りに手を伸ばし、桜華の襟もとにあてがう。
「これなら、狛治にも合うから一緒に欲しい。」
というと、きまりだな。と言って早々と売り子のところにもっていった。
支払いを済ませると、前からそれを付ようと、ふいに近づいてうなじに手がかかって恥ずかしい気がした。
しかし本人は通常運転で、
「やっぱりいいな。」
と、にこやかに笑った。
「じゃぁ、狛治も後ろ向いて?」
照れ隠しで後ろを向かせて、受け取ったそれを首につける。
頸の線があった場所に首飾りの黒い紐が重なり、思わず撫でた。
「ん?」
「ううん、何でもない。こっち見て?」
振り向いた狛治の襟元を整えてやってその眼を見た。
「うん。やっぱりいい。ありがとう。」
桜華が心から感謝を述べた。
あぁ。と短く返事をして、また手をつないで歩き出す。
繋ぎなおした手は先ほどよりも熱く感じた気がした。