第1章 解放
『桜華。覚えてなさい。
鬼も最初は人間だったことを。』
『多くの鬼は鬼になってしまうほどの憎しみで鬼になるけど、
怒りの矛先が自分自身に向かっている鬼もいるということを。』
『はい。御父様。』
『そしてもうひとつ。人間も鬼もわたしはもう一度やり直す機会があっていいと思ってる。
桜華は凪だ。どんなに気が立つ人も君の前では凪になる。
素晴らしい可能性を持っているんだよ。』
それが父と娘の最後の会話だった。
その夜、
六つ目の鬼に彼女の全てを滅ぼされ
桜華ただ一人が生き残った。
絶望的なその状況に彼女は死んだものとされいた。
一人生存を疑わないものが奔走するも
探しだすことはできず、その事件は終焉を迎えたのである。
物語の始まりはその5年後のこと。
桜華が囚われた鳥かごから出され
再び物語が動き出す。