第3章 櫻×大 1
-櫻井side-
あいつが部屋から出てったと同時に
冷静さを少し取り戻して智くんの方を振り向いた
智くんは発見した時の格好のまま、
腰が抜けたようにへたり込んでいた...
その躰は照明がついてなくて
薄暗いこの部屋でもわかるほど震えていた
智くんをこれ以上怖がらせないように
静かにしゃがみ込んで
目線を合わせながら腕を拘束していたものを
解いていく
智「...っ..しょ....くん..な....んで..?」
「楽屋行ったら智くんいなくてさ..朝から様子おかしかったし...ごめんね?..鞄の中見たんだ...」
智「え..鞄...?」
「うん..封筒の中に入ってた写真とか手紙とか全部...」
智「写真...ぁっ...」
考え込むようにしていた智くんは
鞄の中にあった封筒の存在を思い出したのか
俺の事を伺う様に見つめてくる
「..帰ろっか...」
智「う..ん....」
足首に絡まっていたズボンと下着を履かせて
腕を拘束するために使われたであろう
しわくちゃになった智くんのTシャツの代わりに
俺の上着を着せる
「ちょっと待っててね 荷物とってくるから」
智「えっ..大丈夫だよ...自分で..」
「なーに言ってんの とりあえずマキシマム急いで戻ってくるからここで待ってて? ね?」
智「..うん...」
落ち込んだ空気を少しでも上げるために
わざと声のトーンを上げて荷物を取りに楽屋へ戻る
あいつをどうするかはひとまず後だ...
今はとにかく智くんを安心させなくちゃいけない
智くんの鞄にあった写真や手紙は証拠として
俺が持っておくことにして...
「ごめんお待たせ」
智「ううん..ありがと..」
少しふらつく智くんを支えながら
駐車場に向かってそれでもまだ遠慮する智くんに
いいからいいからと自分の車に乗せて家に向かった