第3章 櫻×大 1
-櫻井side-
胸騒ぎを抱えながら、智くんを探しに行く
一番近くのトイレに行ったが、智くんは
そこにはいなくて行き違いになったのかも
しれない...とまた楽屋へ戻った
楽屋に戻り、もう一度見渡すと智くんの鞄が
あるのに気付いた
その時、さっき通路で智くんが慌てた様に
何かを鞄にしまっていたのを思い出した
なにか...手掛かりになるかもしれない...
智くんには悪いと思いつつも
自分のリュックとは似ても似付かないほどに
整理整頓が行き届いた鞄を開ける
鞄の中には整頓し尽くされた荷物たちには
そぐわないほど乱雑に入れられた封筒と
数枚の紙があるのが見えてそれらを取り出した
「これ..って....」
紙には隠し撮りと思われる様な角度で智くんが
撮影された写真があった
会計をしている所や、街中を歩く所...
その枚数は十数枚もある
その他には、"愛してる" , "迎えに行く" と
書かれた手紙に、
男性器の...それも勃起状態のモノが
大きくアップで写っている写真もある
通路でこれを見てあんなに動揺し、
震えていたって事か?
人に怯える様な目...楽屋だけじゃない
スタジオでの撮影前も...
撮影中ですら、
軽いボディタッチで軽く硬直していて
メンバーみんなが心配そうにしながら
フォローに回っていた..
迎えに行くって事は...ストーカーか?
それならマネージャーくんの言う
"パーソナルスペースが広くなった様に感じた"
と言う言葉も頷ける
ストーカーの気配を感じ取り、
警戒心が強くなっていたのだろう...
胸騒ぎが大きくなるのがわかる
廊下でこれを見てたって事は
きっとあの時気づいたんだろう..
支度をしても気付かないなんて事は
ないだろうしな...
そこで、はたと気付く...
廊下で気づいた..? ..だとしたら....
ストーカーの正体は局内にいる..?
俺はすぐ帰って来たし、そんなに遠くには行ってないはず...
ようやく胸騒ぎの正体がわかった気がした
...助けなきゃ..
智くん...どうか無事でいてくれ..
そう願いながら楽屋を飛び出した