第1章 unlucky men
ZEROを任されたあたりから、どんどん忙しくなってきて、恥ずかしい話だがその時に俺も吐いていたことがある。
プレッシャーだったのか、身体が追い付いていなかったのか。
元々太りやすい性質だ、それに過食嘔吐が混ざって、食べたくないのに食べてしまう。本当に地獄みたいだった。
——あの時は、大野さんがいなかったら、今頃どうなっていたんだろうか。
考えるだけで身震いがする。けれど、それほど大野さんが俺を強く支えてくれたこともまた事実だった。
『無理しなくていいんだよ。あなたの代わりになるものは、何一つだって、ないんだから』
声のトーンも、表情も、場所も、空気も、全てが鮮明に思い出される。
そうだ、今回は、俺が大野さんの代わりになる番だ。
「なんかさ、いつもぼーっとしてて、どこか、変なところ見てるっていうかさ……だから、ストレスとか、溜まってるんじゃないかって思って」
なんて言えば良いんだろう、と事実を隠した言い方に苦戦し、頭を掻く。
本人から愚痴さえ聞き出せれば、後はこっちのものだ。
ニノは人を頼らない。全部自分でやってしまう。それが最適解だと思っている。
俺も前までそう思っていたんだ、でも、違うんだよ。
ニノが潰れてしまう前に、俺が、荷物を少しでも軽くしてやらなきゃいけないんだ、そんな使命感がした。
「私が、ストレス、ですか……?変ですね、メンバーの誰にも言われたことなかったんですけどね。ストレスなんて溜めてませんよ、休みの日はゲーム三昧ですからね」
そっちが疲れているんだと思います、と話を括った。
でもニノは、俺と目をどうしても合わせようとしない。
そこに言いようのない違和感を感じた。
やっぱり、ニノは、何かを必死に隠そうとしている。