• テキストサイズ

Memories of Tomorrow

第1章 unlucky men


 ZEROを任されたあたりから、どんどん忙しくなってきて、恥ずかしい話だがその時に俺も吐いていたことがある。
 プレッシャーだったのか、身体が追い付いていなかったのか。
 元々太りやすい性質だ、それに過食嘔吐が混ざって、食べたくないのに食べてしまう。本当に地獄みたいだった。

——あの時は、大野さんがいなかったら、今頃どうなっていたんだろうか。

 考えるだけで身震いがする。けれど、それほど大野さんが俺を強く支えてくれたこともまた事実だった。

『無理しなくていいんだよ。あなたの代わりになるものは、何一つだって、ないんだから』

 声のトーンも、表情も、場所も、空気も、全てが鮮明に思い出される。
 そうだ、今回は、俺が大野さんの代わりになる番だ。

「なんかさ、いつもぼーっとしてて、どこか、変なところ見てるっていうかさ……だから、ストレスとか、溜まってるんじゃないかって思って」

 なんて言えば良いんだろう、と事実を隠した言い方に苦戦し、頭を掻く。
 本人から愚痴さえ聞き出せれば、後はこっちのものだ。

 ニノは人を頼らない。全部自分でやってしまう。それが最適解だと思っている。
 俺も前までそう思っていたんだ、でも、違うんだよ。
 ニノが潰れてしまう前に、俺が、荷物を少しでも軽くしてやらなきゃいけないんだ、そんな使命感がした。

「私が、ストレス、ですか……?変ですね、メンバーの誰にも言われたことなかったんですけどね。ストレスなんて溜めてませんよ、休みの日はゲーム三昧ですからね」

 そっちが疲れているんだと思います、と話を括った。
 でもニノは、俺と目をどうしても合わせようとしない。
 そこに言いようのない違和感を感じた。

 やっぱり、ニノは、何かを必死に隠そうとしている。
/ 37ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp