第1章 unlucky men
なんで今日なのかって、明日は、俺の誕生日。
つまり今日は1月24日。
俺のエゴで、本当に身勝手だとは分かっている。
それでも、せめて明日くらい、気兼ねも何もせずにニノと笑い合っていたかった。
カタンと箸を置いた。あの日以来、箸は自前のものを使っている。
「……ニノ、ちょっといい?」
彼はライブのパンフレットから、ゆっくりと視線を上げた。
じっとりと気怠げな、湿った視線。
上目遣いなのも相まって、ハイライトの無い瞳に一瞬たじろぐ。けれど、ここで留まってはいけないのだ。
「話したいことがあるんだけどさ。ついてきてくれないかな」
なんで、と声に出さずに問われる。
けれど結局は、無言で立ち上がると、俺の後をついてきて廊下に出てくれた。
誰も怪しがるそぶりは見せなかった。きっとライブの打ち合わせとか、そんなところだと思われているのだろう。
後ろ手にドアをバタンと閉めると、思いのほか大きい音に驚く。風圧に、外界から全て遮断されたような、どうしようもない孤独さがつき纏う。
2人でいるのに、1人でいるよりもずっと寂しい、凍った空気だった。