第1章 unlucky men
ピシャリ。
後ろ手で個室のドアを閉めると、ニノは俺の手首を掴んだまま、ずかずかと廊下を歩いていく。カンカンと俺らの無造作な足音だけが鳴る。すれ違った店員さんが怪訝そうに、にっこりと笑って会釈してくれた。
着いたのは、行き止まりだった。
照明も外れ、陰気な、暗い角だった。人の目から離れ、なんだかじめじめした、秘密の場所みたいな。
何だろう、何か懐かしいような空気、……それで俺は、子供の頃に作った、秘密基地と同じ匂いがすることに気づいた。
ぼんやりと辺りをきょろきょろと見回していると、
「翔さん」
ニノに声を掛けられ、つかの間の回顧は現実に戻った。
「ごめん、ここまで来て、どうしたの?」
ニノは何も言わなかった。その代わり、ずい、と紙袋を俺に突き出す。
「これ、誕生日、おめでとうございます。それじゃ」
「え? ちょ、ちょっと、ニノ!」