第1章 unlucky men
「それじゃ、かんぱーいっ!!」
カン、と甲高いグラスのかち合う音。
カランカラン、と氷がビールの中を泳ぎ回る。
相葉君の掛け声で始まった俺の誕生日会は、一時的にこそすれ、俺の中からニノへの「感情」の存在を忘れさせてくれるものだった。
「それじゃ、誰から渡す?」
唇の上についた白い泡を舌で拭いながら、大野さんが言った。
片手は足元。何やら鞄の中か何かをまさぐっている様子で、それが、胸がぎゅっと締め付けられるみたいに嬉しくて、照れくさかった。
何年たっても、何回過ごしても、この時間は、いつだって特別な幸せだ。
「俺からでいい?」
俺の左隣の、松潤が言った。既に両手には何やら大きい袋が抱えられている。大野さんは、にこにこと無言で頷いた。
松潤は肩をすくめて、相好を崩す。そして、紙袋をばっと差し出した。
「はい、翔くん、誕生日おめでとう!」
「……ありがとう!」
受け取った紙袋は、ずっしりと重い。中を覗くと、もう一回り小さいビニール製の袋が針金で縛られて、針金にはタグが付いていた。天井からの光を浴びて輝く銀色のタグを手に取ると、
『happy birthday to you』
と、松潤の手書きの文字で。