第1章 unlucky men
「でも俺は、今だったら自分の過食嘔吐にもある程度対応できますから。どうしても困ったら、マネージャーに四六時中ついてもらいます(笑)」
ポチリ、と送信ボタンを押した。
窓の外は、街明かりが煌々と輝いている。
まだ眠らないみたいだった。むしろ、眩しかった。
眠れない程ではないけれど、カーテンを式まなくぴっちりと閉めても、寝室は、暗闇には程遠い。
またもやスマートフォンが、ピロンと鳴いた。
『そうだね。翔ちゃんは、しっかりしてるよ、本当に』
文面を読んだ瞬間、思わず、「そんなことない」と呟いた。
俺は、弱いから。
「俺よりニノの方がしっかりしていますよ」
『どうだろう、俺には、人の差なんて付けられないや。……そうそう、ニノの話だったね。俺からも話してみようか』
上手くかわされた気がする。
「どうでしょう、今日、ニノに体調のことを聞いたら、明らかに避けられましたから。……大野さんになら話しやすい気もしますが」
『そう?ニノは翔ちゃんのこと、本当に信頼してると思うよ。見てて分かる』
信頼、か。
今日の出来事で、俺がニノに詰問じみたことをして、ニノの信頼は——どうなったのだろう。
もう見放されたりなんて、無いとは、思うけれど。
ニノはああ見えて義理堅くて、優しいし、友情には厚い。
だからこそ、だ。
俺がニノの気持ちを踏みにじるようなことをして、自分でため込んでいた気持ちを、ぶち壊しにして、それで……あいつは、俺のことを、それでも信用してくれるのだろうか。
ニノが俺を信用してくれていたことは気づいていた。
勿論、俺も。
でも、何かを失うかもしれない、その怖さには、どうしても耐えられない。
大野さんのメッセージには、返信しなかった。
ベッドに寝転がる。無駄に広いベッドの枕元、覗いた小窓に、疲れ切ったような自分の顔が映り込んでいた。