• テキストサイズ

Memories of Tomorrow

第1章 unlucky men


 心配ありがとうございました、と頭を下げて背を向けるニノに、俺はなすすべもなく、呟く。
 
 せめて届いて欲しい、と。

「……何かあったら、俺に、相談してよ」

 多分ニノには聞こえていた。
 でも、それだけでは、駄目だったのだ。

 届くというのは、物理的に耳に響くことじゃない。

 自分の心に、しっかりと響かなければ、言葉は「届く」とは言えないんだ。

——なあ、ニノ、なんでそんなに背負いこむんだよ。

 彼は結局、振り返りもせずに廊下の向こうへ消えていった。
 そのまま楽屋に戻る気にもなれない。
 心の中に、ぽっかりと、空虚な穴が開いたまま廊下に突っ立っていた。

 磨きこまれた床に、自分の顔が映っている。
 妙に冷淡に見えた。

 自分で傷口を広げただけの話だった。
 もう、明日の誕生日なんて、気にしてさえいなかった。
/ 37ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp