第2章 ■恥ずかしさの価値観について■
(風雷暴見聞録ゾンビマン、恋人未満)
『なぁ、ひとついいか?』
食事をご馳走してくれる、と言われ箸を使わない、持ち帰りで食べることの出来るハンバーガーを買って貰った。箸で食べる食事はきっと腹が満たされる(腹に入ればなんでも良いが)が、箸の使用にモタつけば私に食わせようとするから、思い切って食器すら要らないものを選んだ。
再会した川沿いにわざわざ持ってきて食べる。何口かチーズの挟まったバーガーを齧り付いた時に中に挟まる挽肉の塊…ハンバーグの層を見てふと、隣のゾンビマンに聞いてみた。
『あんたは死なない。臓器が溢れても、だ。臓器が露出している時ってあんた、どういう感情なんだ?』
「……あ?」
『ほら、全裸だと普通に恥ずかしいとかあるだろ?そんな感じでハラワタが出ると普通は痛い、とか焦るなり細菌が入らないようにしようとかするだろ?私は臓器露出する事は無かったが……。
あんたは内臓を人前で晒した時、恥ずかしいとか思うのか?』
私の攻撃を受けてあまり痛がる素振りも見せなかった。感覚が鈍いのかも知れない。ただ、興味だった。
ゾンビマンは少し黙ってから、ため息を吐いた。
「…俺が不気味か?」
『まさか。実験体同士だ、これはただ全裸でも前を隠さない男が恥という概念があるのか、という疑問をぶつけているだけだよ』
「……」
僅かに疑う視線を放つ瞳は、呆れた瞳へと変わる。
ゾンビマンは大きなバーガーを口元から離した。
「…臓器が出た時は、あー出ちまった、とかあと何分で回復するなとは思うが…」
『じゃあ、下半身を露出した時は?』