【被虐のノエル】明日を笑うレモンキャンディ【リベリオ】
第1章 明日を笑うレモンキャンディ
調理台を背にして寄りかかる少尉に合わせて私も寄りかかる。後ろに私の食事があるけれどココアだけでもなんだか腹が膨れそうで。
「ああ、ドラットンの暴走に俺も噛んでるしな、こんな時間まで仕事させたお詫びにパフェでもおごってやるよ」
食事の話でわざわざパフェの話をするなんて変な人だな、とココアを飲んで思う。
コーヒーではなくココアを選び、メシおごると言ってパフェと言い出す少尉に、ふと、思った事を口に出してみた。
『少尉ってもしかして甘党だったりします?』
「ゴフ、」
『あ、甘党なんですね……』
小さく咽て、声を抑え言うなよ、と口止めをされてしまった。
意外だ、ストラーダ少尉が甘党だなんて。ギャップが凄い。
『じゃあ、"メシ"奢って下さい。その際に少尉はパフェを食べれば良いじゃないですか?』
背後からクッキーを取り出して食べる私につられて、少尉もクッキーを取って口に咥えた。
「マジか?それじゃ明日行こうぜ」
『決断が早すぎでは?明日は仕事終わりに買い物もしたいんですけれど』
やるとなったら行動に移すタイプなんだろうな、と決断の速さに関心しながら口の中のクッキーをココアで流し込む。体に悪い夕飯だ。
私の言葉に少しだけ間を開け(食ってたからだろうけど)こちらをじっと覗き込む少尉。
「じゃあ、買い物も付き合ってやる。それなら良いだろ?買い物帰りにメシ食ってを寮まで送ってやる」
『ああー、それ、良いですね』
飲み終えたカップをコン、と置く。
再び出された飴を私の手に載せられて手をぎゅむっと指ごと握られて返す隙きを与えない。
「じゃあ約束だな、明日な。おやすみ」
『はい、おやすみなさい』
その場を去る少尉。
手の平の飴の可愛らしい黄色とオレンジのストライプの包装を剥いて口に入れるとレモンキャンディだった。
『ん?』
カラコロと口内で飴玉と遊びながら明日の約束を考える。
買い物をして食事。これってなんだか。
『デートみたいだな……』
少しだけストラーダ少尉に距離を詰められた気がして、レモンキャンディの様に甘酸っぱい想いに溢れる感情を抑える為に口元を手で押さえた。